トノサマガエルを冬眠(越冬)させようと思うのだけど、どんなことに注意すればよいのか。
トノサマガエルを2年連続で冬眠させて実感した注意点は以下7つです。
- 冬眠前はエサを十分に与える
- 10㎝前後の土を敷いておく
- 水溶器やエサケースは事前に置いておく
- 昼は日陰になるような場所にケースを置く
- 冬眠中は土に水が浸透した状態にしておく
- 真冬も水に浸かれる環境にしておく
- 冬眠明けはエネルギーの高いエサを与える
ネット上ではトノサマガエルに限らず、野生のカエルや小型爬虫類の冬眠飼育は難易度が高く、冬の野外飼育は推奨されていませんが、注意点を意識すれば、冬眠中の死亡率を大きく下げることができます。
野生下のトノサマガエルの冬眠事情
トノサマガエルの冬眠飼育に挑戦する前に、野生下のトノサマガエルの冬眠事情は知っておく必要があります。
飼育レイアウトでも同じことが言えますが、野生下の環境に飼育のヒントが隠れています。
トノサマガエルは土の中で冬眠
カエルは生態別に以下4つの分類に分けられますが、トノサマガエルは半水棲になります。
- 樹上性
- 地上性
- 半水凄
- 水凄
常時水中にいるのはアフリカツメガエル等の水凄カエルであり、半水凄のトノサマガエルは夏場の活動期は水辺付近にいることが多いですが、常時水中に潜っているわけではありません。
また、冬場は水の中でなく土の中に潜って冬眠します。
カエルが土に潜るイメージが湧かない人も多いと思いますが、実際にトノサマガエルを飼ってみるとわかりますが、後ろ足を使って土を掘り起こして身を潜めています。(20分ぐらいで身を隠せる深さまで掘り起こせます)
そのため、トノサマガエルを冬眠飼育させるためには『土』は必需品となります。
トノサマガエルは15度を下回ると冬眠の準備をする
トノサマガエルは10月に入り最低気温が15度を下回ってくると、土の中に潜って冬眠の準備をします。
ただし、朝晩の寒さを凌ぐために一時的に土の中に潜ることもあるため、土の中に潜って寒さを凌いでいるのか、冬眠に入ったのかは、すぐにはわかりません。
冬眠のきっかけは気温だけでなく、棲んでいるエリアの田んぼの状況(水の有無)にも左右されます。
トノサマガエルは冬眠中にめったに地上に出てこない
ヒキガエルは交尾のために真冬の1月・2月に地上に出てきます。
しかしながら、トノサマガエルは真冬にイベントはないため、水分やエネルギーが足りないなど特段の事情がない限り、地上に出てくることはありません。
そのため、トノサマガエルの冬眠時期となる11月から4月は、野生下ではほとんど見かけることができません。
トノサマガエルの冬眠(越冬)飼育時の7つの注意点
- 冬眠前はエサを十分に与える
- 10㎝前後の土を敷いておく
- 水溶器やエサケースは事前に置いておく
- 昼は日陰になるような場所にケースを置く
- 冬眠中も定期的な霧吹きで湿度を保つ
- 真冬の冬眠中も水に浸かれる環境にしておく
- 冬眠明けはエネルギーの高いエサを与え衰弱死を防ぐ
冬眠前・冬眠中・冬眠明けの時系列順に並べました。
順番に解説していきます。
冬眠前はエサを十分に与える
トノサマガエルは個体によっては半年以上冬眠します。
したがって、蓄えがないとエネルギーが枯渇して真冬に地上に出てきてしまうか、そのまま永眠してしまいます。
仮に地上に出てきたとしても、真冬の環境ではトノサマガエルは敏感に動くことはできず、すぐに力尽きてしまう可能性が高いことから、真冬に地上に出てきてしまう原因を潰しておくことが大事です。
具体策として、9月中旬以降からは夏場以上にエサをたくさん与えていきます。
幼体のトノサマガエルならば、脂質の高いミルワームもガットローディング・ダスティングを行いつつ、たくさん与えていきます。
見るからにぽっちゃり体型と思えるぐらい、エサを十分に与えておくことが冬眠前の一番の準備と言えます。
我が家では幼体トノにはミルワームと市販のSサイズコオロギ、大型トノには近くの田んぼで捕まえたコオロギやイナゴや小型のカエルを与えていました。
10㎝前後の土を敷いておく
トノサマガエルは土の中に潜って冬眠します。
土の中に潜る理由の1つが寒さ対策です。
トノサマガエルは体内の血液まで凍ってしまうと凍死します。
土の中であれば地上よりは寒さを凌ぐことができますが、当然ながら土の深さが浅いと外気の影響を受けやすいです。
そのため、冬眠前には10㎝前後の土をセットしておきましょう。(あまり深すぎると土の中間層に水が浸透しにくくなるリスクがあります)
床材を入れ替えるタイミングは、エサをガッツリ与える時期で問題ありません。
土の種類ですが、保湿性の高い腐葉土がおすすめです。
土を掘り起こす力が弱い幼体トノサマガエルの場合は、水苔を敷いてサポートしましょう。
ネット上ではトノサマガエルは5㎝ぐらいの深さで十分という意見もありますが、我が家の大型トノサマガエルは深さ15㎝の土の一番下まで潜っていた(ケース下から確認)ので、大型トノサマガエルであれば10㎝以上は土を入れてあげてください。後はカエルが個々に判断します。
水溶器やエサケースは事前に置いておく
冬眠中はエサを与えないためエサケースは不要ですし、カエルは土の中なので水容器も不要と感じ撤去したくなりますが、そのままにしておきましょう。
なぜなら、冬眠明けのタイミングでエサケースや水容器の設置が必要となりますが、設置した位置の下にトノサマガエルが冬眠していると霧吹きの水分が行き渡らず、脱水症状で死亡してしまったり、地上に出てこれなく力尽きてしまうリスクがあるからです。
水容器に関しては後述しますが、冬場も湿度の維持と万が一トノサマガエルが地上に出てきても水分を補給できるように、置いておく必要はあります。
エサケースにおいても、飼育が1匹だけなら、冬眠明けを確認してから設置で構いませんが、多頭飼育の場合、1匹が冬眠明けした時点でエサケースを設置して、いつでもエサを食べられる環境にしておく必要があります。
冬眠前に冬眠明けのレイアウトをしっかりイメージしておくことが大事だよ。
昼は日陰になるような場所にケースを置く
トノサマガエルの冬眠を妨げる大きな要因が気温です。
気温が上がるとトノサマガエルは春が到来したと認識して目覚めますが、勘違いとわかると再び土の中に潜ります。
注意したいのが、一度目覚めてしまい体を動かすと貴重な体力を消耗してしまうこと。
そのため、冬眠飼育中においては、暖かくなる昼間は日陰になる場所に飼育ケースを置き、勘違いでトノサマガエルが目覚めてしまうことを避ける必要があります。
とくに2月以降は、春の陽気のような日が到来することもあるので、飼育ケースの置き場所には気をつけましょう。
万が一、トノサマガエルが目を覚ましてしまった場合は、暗く静かな場所に置いて、再び冬眠を促しましょう。
2月下旬~3月中旬は、日中は暖かい日があっても、朝晩はまだまだトノサマガエルが活動できる気温でないため、冬眠してもらった方が飼育は楽だよ。
冬眠中は土に水が浸透した状態にしておく
冬眠中のトノサマガエルは土の中でジッとしているため給餌は不要です。
野生のトノサマガエルもエサとなる虫がいない冬は地上にいません。
ただし水分は別です。
冬眠中のトノサマガエルも活動期と同様に身体から水分を吸収します。
そのため、10日に1回程度でいいのでケース内に水を入れて土に水を浸透させます。
土への浸透方法ですが、トノサマガエルは個体によってケースの下層部で冬眠するものもいれば、上層部で冬眠するものもいるので、下記画像のように下層部に直接注入できるスポットを作り、下層部は植木鉢から、上層部は上から水を振りかけることで、土全体に水を浸透させます。
上記飼育レイアウトのケース底は鉢底石が敷いてあります。
鉢底石の部分は常に水を入れた状態にしておくことがポイント。
最下層部分を水で浸しておくことで、土の下層部にも水が行き渡ります。
霧吹き作業は日ごろチェックも兼ねているため、可能であれば毎日、最低でも2日に1日は行っておきたいですね。
真冬の冬眠中も水に浸かれる環境にしておく
霧吹きが不十分でトノサマガエルが脱水症状を起こしても、すぐに死ぬとは限りません。
脱水症状になると水分を求め、真冬でも地上に出てくることがあります。
そのため、トノサマガエルが予期せぬタイミングで出てきても水分補給ができるように、体半分ぐらい浸かれる程度の水容器を設置しておく必要があります。(活動期のような潜れる深さは不要です。)
また水容器の設置は保湿にも役立ちます。
水の入れ替えについては、夏と違い冬は水も汚れにくいので、水の入れ替えは不要で、水が少なくなったら足すだけで十分です。
注意点として、真冬のトノサマガエルは過敏に動くことはできないため、水容器の高さは低くし、大ジャンプしなくても水容器の中に入れるようにしておきましょう。
過去の失敗として、水容器の水が空であったため、真冬に水分を求め地上に出てきたトノサマガエルが水容器付近でミイラ化していたこと。また毎日の霧吹きを怠っていたため、トノサマガエルが地上に出てきたことに、すぐに気が付かなかったことも失敗原因の1つです。
冬眠明けはエネルギーの高いエサを与え衰弱死を防ぐ
暖かくなりトノサマガエルが地上に出てきたら冬眠飼育成功とは言い切れません。
なぜなら、冬眠明けのトノサマガエルは衰弱状態で、飼育管理を怠るとそのまま衰弱死してしまう可能性があるからです。
冬眠明けのトノサマガエルはエネルギーが枯渇状態であるため給餌が必要です
ただし、気温もまだ高くなく運動能力も消化器官も本調子ではないため、活動期と同じ感覚で給餌してはいけません。
個人的には以下5つの理由から、ハニーワームを少しずつ与えていくことをおすすめします。
カエルの主食であるコオロギは、冬眠明けの3月に与えても、寒さで捕食される前に衰弱死する可能性が高いので注意が必要です。
コオロギが飼育ケースから消えた=捕食でなく、『消えた=物陰で衰弱死』の可能性もあるため、コオロギを与える場合は、捕食まで見届けましょう。
トノサマガエルが本調子を取り戻すまでが冬眠飼育だよ。
トノサマガエル冬眠飼育で知っておきたい2つのこと
トノサマガエル飼育といっても、夏におたまじゃくしからカエルに変態した小型トノサマガエルと3年以上生きている大型トノサマガエルとでは、冬眠にも違いが出てきます。
小型トノサマガエルのほうが冬眠飼育の難易度は高い
大型の成体より小型の幼体のほうが難易度が高いです。(カエルに限らず爬虫類でも同様)
小型トノサマガエルは冬眠に備え、十分な蓄えができないからです。
一般的に大型トノサマガエルのほうが越冬のために、よりエネルギーを蓄えることができます。
また大型のほうがエサの選択肢も広く、バランスよく蓄えさせることができます。
小型の場合、与えるエサは限られるうえに、与えたエサが口に合わず積極的に捕食しない個体もいます。
野生下であれば、口に合うエサを探し出し捕食するのですが、飼育環境では与えられたエサを捕食して生き延びるしか方法がありません。
実際に僕自身、トノサマガエル1年目の冬眠飼育で、大型2匹・中型1匹・小型6匹の冬眠飼育に挑戦しましたが、小型4匹は1月~2月下旬に死なせてしまった苦い経験があります。
大型トノサマガエルのほうが冬眠期間は長い
大型トノサマガエルのほうが、蓄えがあるのか寒さに敏感なのか、小型トノサマガエルと比較して早い時期に土に潜ります。
また土の中からなかなか出てきません。
実際に我が家の大型トノサマガエルのうちの1匹は10月初旬から土に潜り、5月のGWになっても出てきませんでした。
ネット上ではトノサマガエルの冬眠期間についてあれこれ書かれていますが、大きさや個体によって大きく異なるので参考程度に留めておきましょう。
GWも明けて気温が安定したら、飼育ケースの掃除や土の入れ替え兼ねて、トノサマガエルを土の中から取り出しても大丈夫です。
トノサマガエル冬眠飼育まとめ
本記事では、トノサマガエルの野生下の冬眠事情と、冬眠飼育の注意点についてお伝えしました。
- 水の中でなく、土の中で冬眠する
- 15度を下回ると冬眠の準備をする
- 冬眠中に地上に出てくることはほとんどない
- 冬眠前はエサを十分に与える
- 10㎝以上の土を敷いておく
- 水溶器やエサケースは事前に置いておく
- 昼は日陰になるような場所にケースを置く
- 冬眠中も定期的に霧吹きを行う
- 真冬の冬眠中も水に浸かれる環境にしておく
- 冬眠明けはエネルギーの高いエサを与え衰弱死を防ぐ
- 小型のほうが冬眠飼育の難易度は高い
- 大型のほうが冬眠期間は長い
飛行機においても危険なのは飛行中でなく離陸・着陸であるように、トノサマガエルの冬眠飼育においても、特に注視するのは冬眠中でなく冬眠前と冬眠明けです。
とくに冬眠前の事前準備が不十分だと冬眠に成功してもそのまま永眠してしまったり、真冬に地上に出てきてしまう恐れがあります。
冬眠飼育の成功とは、トノサマガエルが冬眠から無事目が覚めて、日常的な状態に戻ることなので、冬眠明けも地道な飼育が求められます。
当サイトでは自身の失敗を含む飼育体験談を元に、これからカエルを飼育する方に役立つ情報を発信していきます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。