ナゴヤダルマガエルもトノサマガエルも同じトノサマガエル属のカエルであることから、判別は簡単にはできません。
実際に子どもがナゴヤダルマガエルを捕ってきたときにも、瞬時にトノサマガエルでないと気がついたわけでなく、複数の特徴の違いから総合的に判別した感じでした。
ナゴヤダルマガエルとトノサマガエルの見た目の違いは5つ挙げられますが、必ずしも全て当てはまるわけではないです。
- 黒の斑点模様
- 目の横のライン
- 背中線に有無
- 四肢の長さ
- 体型
本記事ではナゴヤダルマガエルとトノサマガエルの具体的な判別法に加えて、見た目以外の特徴の違いについてもお伝えします。
ナゴヤダルマガエルとトノサマガエルの特徴
ナゴヤダルマガエルとトノサマガエルは見た目以外に、生息分布や絶滅危惧度の違いがあります。
どちらも同じトノサマガエル属のカエル
主なカエルを『界・門・綱・目・科・属・種』で分類すると以下の通り。
ニホンアマガエル
ニホンヒキガエル
トノサマガエルとナゴヤダルマガエル
ダルマガエルはトウキョウダルマガエルとナゴヤダルマガエルに分類されます。
トノサマガエルもナゴヤダルマガエルも『属』までは同じで、種が異なります
どちらもトノサマガエル属であることから、姿形のほか水辺を好むなど生態も似ていますが、種が異なることから交配は限定の組み合わせでしか行えません。
ナゴヤダルマガエルは日本固有種
トノサマガエルはアマガエル同様に日本だけでなく、朝鮮半島や中国にも生息しています。
ナゴヤダルマガエルは日本固有種であり、西日本の特定のエリアにしか生息していません。
したがって、海外で捕まえたトノサマガエル属は、ダルマガエルでなくトノサマガエルとなります。
ナゴヤダルマガエルは限定エリアのみ生息
ナゴヤダルマガエルは中部地方南部、東海近畿地方中部、瀬戸内海地方に分布します
トノサマガエルは本州(関東・仙台平野を除く)・四国・九州に分布します。(北海道に生息するトノサマガエルは国内外来種とされています。)
分布状況より、九州で捕まえたトノサマガエル属はトノサマガエルと断定できます。
愛知県で捕まえたトノサマガエル属はトノサマガエルとナゴヤダルマガエルが混在しているため、判別スキルが求められます。
新潟県にはナゴヤダルマガエルは生息していませんが、トウキョウダルマガエルが生息しているため、トウキョウダルマガエルとトノサマガエルの判別スキルが求められます。
埼玉県にはトノサマガエルもナゴヤダルマガエルも生息していないため、トウキョウダルマガエルと断定したいところですが、近年は関東平野でもトノサマガエルの目撃情報があるため、疑惑の目は求められます。
長野県は3種のトノサマガエル属が揃うトノサマガエル王国となりますが、長野県内でナゴヤダルマガエルとトウキョウダルマガエルの分布は異なっています。
ナゴヤダルマガエルは絶滅危惧類に分類
様々な生き物が生息する田んぼの減少により、トノサマガエル属も絶滅の危機が迫っています。
具体的にはトノサマガエルとトウキョウダルマガエルは準絶滅危惧(NT)、ナゴヤダルマガエルは絶滅危惧IB(EN)に認定されています。
絶滅危惧に分類されているナゴヤダルマガエルについては、一部の自治体では本格的な対策が行われています。
絶滅 (EX) | 我が国ではすでに絶滅したと考えられる種 |
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野生絶滅 (EW) | 飼育・栽培下あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ 存続している種 |
絶滅危惧I類 (CR+EN) | 絶滅の危機に瀕している種 |
絶滅危惧IA類(CR) | ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの |
絶滅危惧IB類(EN) | IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの |
絶滅危惧II類 (VU) | 絶滅の危険が増大している種 |
準絶滅危惧 (NT) | 現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種 |
情報不足(DD) | 評価するだけの情報が不足している種 |
絶滅のおそれのある 地域個体群 (LP) | 地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの |
トノサマガエル属は絶滅危惧である貴重なカエルであることから、飼育する際は知識と道具を揃えてから迎えてあげましょう。
野外用の飼育記事はこちらを参考にしてください。
トノサマガエルは繁殖期に体内の色が変わる
トノサマガエルのオスは繁殖期になると黄金色に変わります。
繁殖期に色が変わるのは日本のカエルではトノサマガエルのみの特徴であり、ナゴヤダルマガエルは繁殖が要因で色は変わりません。
ただし、アマガエルなど一部のカエルは保護色として色が変わるため、『色が変わる』はトノサマガエルの特権ではありません。
トノサマガエルとナゴヤダルマガエルの判別ポイントとなる5つの違い
- 黒の斑点模様
- 目の横のライン
- 背中線に有無
- 四肢の長さ
- 体型
判別ポイントは5つありますが、信頼度の高い判別方法は①②③で④⑤は参考程度の判別方法となります。
ナゴヤダルマガエルは黒の斑点模様が独立している
一番分かりやすい判別方法が背中の黒の斑点です。
トノサマガエルは体の黒の斑点が繋がっているのに対し、ナゴヤダルマガエルの黒の斑点は独立しています。
我が家のナゴヤダルマガエルも専用ケースに移し替えたときに、体の表面がシンプルであったことから、トノサマガエルではないことに気づくことができたよ。
注意点として、トノサマガエル幼体は黒の斑点模様が少ないため、後述する目の横のラインによる判別のほうが信頼性が高いです。
ナゴヤダルマガエルの目の横のラインは下に折れ曲がっている
ケースに入れた状態で分かりやすい判別方法が目の横のラインです。
トノサマガエルは目の横の黒のラインがYの字になっているのに対し、ナゴヤダルマガエルは黒のラインが下に曲がっています。
目の横のラインの違いはハッキリしているので、黒の斑点模様と目の横のラインの2つの特徴で、おおよその判別はできます。
ナゴヤダルマガエルは背中線が明確に出る個体が少ない
背中線の有無もナゴヤダルマガエルとトノサマガエルの判別の1つとして有効です。
ただし、個体によっては背中線のあるナゴヤダルマガエルもいれば、背中線のないトノサマガエルも存在するため、背中線の有無は確実な判別方法ではありません。
実際に愛知・岐阜で100匹以上のトノサマガエルと遭遇しましたが、背中線のないトノサマガエルと遭遇したことはありません。
ナゴヤダルマガエルにおいては背中線のある個体をたまに見かけますが、トノサマガエルのような鮮明な背中線ではないです。
背中線のないトノサマガエルを捕まえた場合は、ナゴヤダルマガエルの可能性があるので、黒の斑点や目の横のラインで確認してみましょう。
ナゴヤダルマガエルは後ろの中指が短い
ナゴヤダルマガエルは四肢が短く、しゃがんだ状態で後ろ足の中指が前足より前に出ない特徴があります。
トノサマガエルもしゃがんだ状態で、常に後ろ足の中指が前足より前に出ているわけではないのですが、見比べると、四肢の短いナゴヤダルマガエルの方が後ろ足が前に出ていないことがわかります。
四肢の短さも判別方法の1つとして有効ですが、静止していないと分かりにくいため、捕獲してからの判別法になります。
ナゴヤダルマガエルは体型が丸い
ダルマガエルの由来は『ダルマのように丸い』からと言われています。
我が家のカエルにおいてもトノサマガエルはスマートな体型に対し、ナゴヤダルマガエルはぽっちゃり体型です。
ただし、トノサマガエルもエサをたくさん食べた後、水辺で水分をたっぷり吸収した後はダルマガエルのような体型になるため、いつも使える判別法ではありません。
カエル飼育していると気づきますが、トノサマガエルだけでなくヌマガエルやアマガエルも給餌後はダルマのような体型に変わるよ。
ナゴヤダルマガエルとトノサマガエルと違いまとめ
本記事ではナゴヤダルマガエルとトノサマガエルの違いについてお伝えしました。
- 黒の斑点模様・・判別度A
- 目の横のライン・・判別度A
- 背中線の有無・・判別度C
- 四肢の長さ・・判別度B
- 体型・・判別度C
- ナゴヤダルマガエルは日本固有種
- ナゴヤダルマは限定エリアのみ生息
- ナゴヤダルマガエルは絶滅危惧に認定
- トノサマガエルのオスは繁殖期に色が変わる
ナゴヤダルマガエルとトノサマガエルは見た目も生態環境も似ているうえに、幼体の頃は見た目の特徴もハッキリしないため、専門家でも判別が難しいケースは出てきますが、本記事の内容を参考にしてもらえれば、太刀打ちはできるはずです。
最後に繰り返しとなりますが、ナゴヤダルマガエルもトノサマガエルも絶滅の恐れがあるカエルであるため、捕まえて飼育する自信がなければ、その場でリリースしてあげましょう。
当サイトでは自身の失敗を含む飼育体験談を元に、これからカエルを飼育する方に役立つ情報を発信していきます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。