子どものころに何も気にせず捕まえていたアマガエルに『実は毒があった!』という事実を知ったのは大人になってカエルの勉強をしてからの話。
毒性があると聞くと、つい警戒しがちですが、結論から言ってアマガエルを素手で捕まえても問題ありません。
僕自身、1時間で50匹以上のアマガエルを素手で捕まえたこともありますが、手が荒れたなどの症状はありませんでしたし、園児の我が子もアマガエルを素手で捕まえていましたが症状はありませんでした。
ただし『毒性がある』という話は事実ですので、本記事ではアマガエルの毒の特徴・注意点についてお伝えします。
得体の知れないものに対し怯える・警戒するのは当然のことなので、本記事の内容を読んで、アマガエルと正しく向き合いましょう。
アマガエルの毒の特徴
毒と聞くと危ないイメージがありますが、警戒すべき毒をもつ生き物は2つの条件を満たしているもの。
- 攻撃型の毒をもつ
- 毒性が強い
アマガエルはどちらも該当しませんので心配不要です。
アマガエルは防御型の毒をもつ生き物
毒をもつ生き物は攻撃型と防御型と大きく2つに分けることができます。
攻撃型とは毒をエサ狩りに利用する生き物のことで、毒ヘビや毒グモが代表的です。
一方、防御型とは敵から身を守るために毒を使用する生き物のことで、カエル界だと色鮮やで世界を代表する毒カエルであるヤドクガエルや日本にも生息するヒキガエルが有名です。
また防御型の毒をもつ生き物においても、何から身を守るかにより毒の強さが異なります。
例えば外来種であるオオヒキガエルは、天敵であるヘビから身を守るために毒を有しており、毒の強さも捕食したヘビが死ぬ事例があるぐらい強力です。
では肝心なアマガエルはどうなのか。
アマガエルは防御型で、細菌から身を守るために毒を皮膚から分泌しています。
細菌を殺すことを目的とした毒レベルであり、オオヒキガエルのような爬虫類や小型哺乳類を殺すレベルの毒ではないので、人間にとってアマガエルの毒は脅威ではありません。
アマガエルの毒の成分(正体)は抗菌性のたんぱく質
たんぱく質が毒と言われると「えっ?」って思われるかもしれませんが、毒を持つ生き物として有名なヘビの毒もたんぱく質です。
アマガエルは皮膚から抗菌ペプチド、抗菌ヒストンといった抗菌性のたんぱく質を分泌します。
これらの抗菌性たんぱく質は細胞を溶かすことができ、アマガエルは皮膚に付着した細菌や微生物を溶かして自身の身を守ります。
細胞を溶かすと聞くと物騒な感じですが、抗菌ペプチドは人間を含む多くの生物が防御機能として用いています。
ペプチドが微生物を溶かすメカニズムは以下の通り。
ペプチドについて詳細を知りたい方は、引用元である東邦大学の『生体防御の秘密兵器・抗菌ペプチド 』を参照してみてください。
注意したいのが、人間の細胞は表面部分に電荷を持たないことから、本来は抗菌ペプチドで傷つかないのですが、アマガエルの抗菌ペプチドは何らかの刺激を受けることで、人間の細胞をも破壊する毒に変わります。
どのようなメカニズムで人間の細胞を破壊するたんぱく質になるかは、今なお研究中みたいですね。
アマガエルの毒による症状
アマガエルが皮膚から分泌する抗菌たんぱく質(抗菌ペプチド・抗菌ヒストン)は、細菌や微生物だけでなく人間にとっても害がある存在ですが、気になるのは症状。
冒頭でお伝えした通り、毒性は極めて弱く素手で触れても問題ありません。
ただし、アマガエルの毒は細胞を破壊する効果はあるため、以下のような行為は痛みや炎症を引き起こす可能性があり危険です。
- 目などの粘膜に触れる
- 傷口に触れる
- 口の中に入れる
要約すると細胞に直接触れる行為は危険ということです。
アマガエルで失明という話も聞きますが、目の粘膜に触れてしまい細胞が破壊されたら、失明の可能性もゼロではないですが、アマガエルを触れた手で触ったぐらいで失明にはなりません。
実際に僕自身、野外でアマガエル数十匹を素手で捕まえた後、無意識的に目をこすったことがありましたが、違和感すらありませんでした。
アマガエルが毒をもつ3つの理由
そもそも、なぜアマガエルは毒をもつようになったのか。
調べていくなかで3つの要因が浮かんだので紹介しておきます。
- カエルは異物の侵入に働く免疫システムが発達していない分、侵入そのものを防ぐ抗菌性たんぱく質の役割が重視されるため。
- アマガエルは細菌が繁殖しやすい湿気のある場所で生息するため。
- アマガエルは小柄な体うえに、他のカエルと比較して細菌や微生物による影響度合いが強くなるため。
カエルは爬虫類のようなウロコもなく、粘膜むき出しのノーガードゆえに身を守る術として、抗菌たんぱくの役割は非常に大きいわけです。
そしてアマガエルは小柄な体ゆえに、進化の過程で他のカエル以上に強力な抗菌たんぱく質を分泌を出すようになったのだと思われます。
アマガエルに触れる際の注意点
- アマガエルに触れた後は手を洗う
- アマガエルを触れた手で目をこすったり鼻をほじったりしない
- 傷口はバンドエイドでガードする
①はアマガエルだけでなく、すべての生き物に言えることです。
自然界では毒以外にも人間に害がある菌を保有している動植物は多いため『生き物に触れた後は手を洗う』は徹底していきましょう。
②は小さな子どもが無意識的にやりがちなので注意。
ウエットティッシュは常備しておきましょう。
③も地味に注意。
アマガエルを捕まえている最中に草木で皮膚が切れることはあり、その傷にアマガエルがくっつくことはあります。(アマガエルは他のカエルと違い神経が図太いので、逃げずにくっつくことはあります。)
傷ができてもすぐにガードできるようにバンドエイドを常備するか、傷つかないように長袖や長ズボンの衣服を着用しましょう。
これらの説明からわかるように、アマガエルの毒による対策はごく一般的な対処法であり、アマガエルに対し過敏になる必要はありません。
他のカエルはアマガエルと比較して、皮膚から分泌される抗菌たんぱく質は弱いですが、細菌が付着していたり寄生虫が宿っていたりするので、基本的な対処法は同じです。
アマガエル以外に毒をもつ日本の両生類
毒を持つ両生類はアマガエル以外にも存在します。
代表的なのはヒキガエルとアカハライモリで、どちらも防御型の毒をもっています。
ブフォトキシンをもつヒキガエル
毒を持つ国内のカエルとして有名なのがヒキガエル。
ヒキガエルは神経毒の一種であるブフォトキシンという毒を含んだ液を両眼の後にある耳腺のところから分泌します。
このブフォトキシンは幻覚剤に用いられ、嘔吐,血管痛などの副作用があります。
ヒキガエルはこの毒を用いてカエルの天敵であるヘビから身を守ります。
しかし不幸にもヒキガエルキラーと呼ばれる(勝手に呼んでるだけ)ヤマカガシというヘビは、ヒキガエルを積極的に捕食するどころか、ヒキガエルの毒であるブフォトキシンを再利用するという、ヒキガエル捕食に特化したヘビです。
またヒキガエルにもいろいろ種類はいますが、特定外来生物に指定されており、石垣島や小笠原諸島に生息するオオヒキガエルはとくに毒性が強く、オオヒキガエルを食べたサキシママダラが消化中に死亡した事例もあります。
テトロドトキシンをもつアカハライモリ
イモリと聞いて真っ先に思い浮かぶのがアカハライモリ。
ペットショップやホームセンターでワンコイン販売されているイモリですが、実はフグやヒョウモンダコと同じテトロドトキシンという毒を持っています。
テトロドトキシンは短時間で人をも死に追いやる強力な神経毒です。
しかし、アカハライモリは極めて少量のテトロドトキシンしかもっていないことから、飼育においても許可制はなく、飼育においても厳格な取り扱いは要求されません。
対処法もアマガエルと同じく、触れた後は手洗いをしっかりすれば大丈夫です。
アマガエルは犬や猫にとっても危険生物ではない
犬や猫を飼っている人だと気になるカエル事情ですが、アマガエルを口にした場合、炎症を起こす可能性はありますが、ヒキガエルのようにすぐに病院行きになるレベルではありません。
実際に我が家で飼っていた野良猫もアマガエルを口にしていましたが、これといった症状はなかったです。
犬猫がカエルを口にして病院へ直行したという話は、アマガエルでなくヒキガエルのこと。
前述した通り、ヒキガエルの毒は犬や猫などの小型哺乳類にとっても強力で重症化することがあるので、ヒキガエルを口にした後に様子がおかしければ、すぐに病院に連れていくべきです。
ただし、アマガエルを含む野生のカエル類は寄生虫も宿していることが多く、細菌も付着しているため、犬の散歩などでカエルが巣くう草むらには入れないのがベターです。
犬猫にとって怖いのはアマガエルの毒より細菌・寄生虫かな。
まとめ:アマガエルに毒はあるが取り扱いは一般的な対処法でよい
本記事ではアマガエルの毒についてお伝えしました。
- アマガエルは防御型の毒をもつカエルで皮膚に毒がある
- 毒の正体は抗菌たんぱく質(ペプチド・ヒストン)
- アマガエルの毒は粘膜や傷口など細胞に触れると破壊され痛みや炎症を引き起こす
- 対策は手をしっかり洗い、カエルを触れた手で傷口や目を触ったりしない
- ヒキガエルやイモリもアマガエルと同じく防御型の毒をもつ両生類
- 犬や猫がカエル類を口にしないように気をつける
アマガエルには毒はある!だから関わるのは止めよう!!
そうではなく、アマガエルは毒性が他のカエルよりやや強く、ばい菌ももっているから、他の生き物と同じように触れた後はすぐに手を洗おう!
アマガエルと関わる子どもが後者のような結論にたどり着けるように、子をもつ親は正しい情報を伝えてあげましょう。
アマガエルは飼育のハードルも低いので、カエル飼育初心者におすすめです。
当サイトでは自身の失敗を含む飼育体験談を元に、これからカエルを飼育する方に役立つ情報を発信していきます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。