夏の終わりから秋の始まりに田んぼに行くと、よく見かけるカエルがアマガエルとトノサマガエル。
どちらも人気と知名度のあるカエルですが、いざ違いを聞かれると、すぐに答えられない方も多いのでは?
本記事ではトノサマガエルとアマガエルを飼育している管理人が、 トノサマガエルとアマガエルの違いを生態と特徴に分けて具体的に解説していきます。
また、視覚ですぐに確認できる見分け方についても表でまとめました。
アマガエルやトノサマガエルの飼育を始めようとしている方はもちろん、カエルを捕まえるのが好きな子ども(とくに男の子)をもつ親御さんも、ぜひ最後まで読んでみてください。
トノサマガエルとアマガエルの生態の違いは3つ
- アマガエルは全国に生息、トノサマガエルは西日本を中心に生息
- トノサマガエルは半水凄、アマガエルは樹上性
- トノサマガエル準絶滅危惧に指定
順番に解説していきます。
①アマガエルは全国に生息、トノサマガエルは西日本を中心に生息
カエルを代表するニホンアマガエルは名前の通り、九州(沖縄除く)・本州・四国・北海道に生息。
沖縄には同じアマガエル科のハロウエルアマガエルが生息しています。
トノサマガエルも 九州(沖縄除く)・本州(関東除く)・四国・北海道に生息。
1つ目のポイントとして、トノサマガエルは本来北海道には生息しておらず、持ち込みにより繁殖してしまったことから、北海道では国内外来種として扱われています。(1993年に初めて発見)
もう1つのポイントが、トノサマガエルは関東地方に生息していないこと。
ただし、関東地方には同じトノサマガエル属のトウキョウダルマガエルが生息しているので、『属』で判断するならトノサマガエルも全国区になります。
トノサマガエルとトウキョウダルマガエルは見分けが非常に難しいので、トウキョウダルマガエルをトノサマガエルと勘違いしている方は多いと思われます。
なお、一部の西日本には同じトノサマガエル属のナゴヤダルマガエルも生息しており、両者の違いについては下記記事で解説しています。
②トノサマガエルは半水棲カエル、アマガエルは樹上棲カエル
田んぼや草むらが茂る用水路でカエルを捕まえていると気がつくこと。
それは、トノサマガエルは積極的に水の中に飛び込むに対し、アマガエルは草の中に飛び込むことが多いこと。
なぜ、行動が異なるのか。
答えは日常の生息場所にありました。
トノサマガエルは半水棲のカエルで、普段は水のある場所に生息し、後ろ足がヒレのようになっているなど、水の中でも自在に動ける構造になっています。
アマガエルは樹上棲のカエル(ツリーフロッグ)で、普段は草や木の上で生息しており、草木をジャンプで自在に移動できるよう吸盤が発達しています。
カエルと聞くと半水凄のイメージが強いですが、アマガエルは水に入ってもすぐに陸に上がろうとするなど、水に対する依存度は小さいです。
半水凄のトノサマガエルは水の中に逃げ込んだとき、水底に潜って隠れることもありますが、アマガエルは水中が得意でないのか泳ぐことはあっても水底に潜ることはしません。
③トノサマガエル準絶滅危惧に指定
絶滅 (EX) | 我が国ではすでに絶滅したと考えられる種 |
---|---|
野生絶滅 (EW) | 飼育・栽培下あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ 存続している種 |
絶滅危惧I類 (CR+EN) | 絶滅の危機に瀕している種 |
絶滅危惧IA類(CR) | ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの |
絶滅危惧IB類(EN) | IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの |
絶滅危惧II類 (VU) | 絶滅の危険が増大している種 |
準絶滅危惧 (NT) | 現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種 |
トノサマガエルはアマガエルと同じく、日本の自然界における有名なカエルですが、近年の田んぼの減少などで個体が減り、現在では準絶滅危惧に認定。
先ほど説明した同じトノサマガエル属であるトウキョウダルマガエルも準絶滅危惧に認定されており、西日本の一部に生息するナゴヤダルマガエルは絶滅危惧IBに認定されています。
トノサマガエルは貴重なカエルであることを認識し、乱獲は控えましょう。
アマガエルは水への依存度がトノサマガエルより低く、吸盤の発達により自在に移動できるなど、生息場所の変化に柔軟に対応できるため、おそらくカエル類の中でも絶滅危惧に認定されるのは最も遅いと思われます。
トノサマガエルとアマガエルの特徴の違いは7つ
- アマガエルは吸盤があり壁も登れる
- トノサマガエルは後ろ足がヒレのようになっている
- アマガエルのほうが皮膚の色が大きく変わる
- トノサマガエルは性別で色が異なる
- トノサマガエルはアマガエルの数倍大きい
- アマガエルの鳴のうは1つ、トノサマガエルの鳴のうは2つ
- トノサマガエルはメスも鳴く
ここから先はトノサマガエルとアマガエルの身体構造上の違いについて説明していきます。
④アマガエルは吸盤があり壁も登れる
樹上性であるアマガエルは草木で生活することから、高い場所にもよじ登れるように吸盤が発達しています。
そのため、どんなに高さのあるケースに入れても、壁をよじ登ってくるので、アマガエルを飼育する際は必ず蓋が必要になります。
トノサマガエルは吸盤がないので、壁にくっつくことはできず、底の深い側溝に入ってしまうと元の場所に戻れず、そのまま干からびて亡くなることもあります。
トノサマガエルにとって深い側溝は、二度と元の場所に戻れぬ片道切符を意味するよ。
⑤トノサマガエルは後ろ足がヒレのようになっている
アマガエルもトノサマガエルも前足は4本の指がしっかり分かれ、獲物を捕らえるときや草木につかまるときに使用されます。
しかし、後ろ足は大きく異なり、アマガエルは前足同様に指がしっかり分かれているのに対し、トノサマガエルは後ろ足がヒレのようになっています。
トノサマガエルは、普段は水辺で過ごすことが多く、水中の生き物もエサとするため、泳ぎにも対応できる構造になったわけです。
また、後ろ足がヒレになったからといってジャンプ力は低下しておらず、大型のトノサマガエルになると、1回で80センチほどジャンプ移動できますし、垂直飛びでも50センチほど飛べます。
用水路を猛スピードで泳ぎ、そこから三角飛びで隣接する田んぼに飛び移った姿を見て、トノサマガエルの身体能力を思い知ったよ。
⑥アマガエルのほうが皮膚の色が大きく変わる
トノサマガエルは水中にいることも多く、陸上の天敵に狙われても水の中に逃げ込めば助かるのに対し、アマガエルは草木にいるため、狙われたときの逃げ場がありません。
そんなわけでアマガエルには天敵から見つかりにくくする保護色が発達しており、茶色や灰色にも短時間で変化できます。
ただし、保護色は個体差が大きく、同じ飼育ケース内でも、プラスチックに色を合わせ常に灰色っぽいアマガエルもいれば、マイペースで常に緑色のアマガエルもいます。
我が家のアマガエルも常に緑色が1匹いますね。
⑦トノサマガエルは性別で色が異なる
カエルの中でトノサマガエルだけが持つ能力。
その能力とは、オスのトノサマガエルは繁殖期に皮膚の色が金色になること。
繁殖期に色が変わることを『婚姻色』と呼びます。
色が変わる理由としては、色で目立つことで、メスのトノサマガエルとの遭遇率を上げるため。
トノサマガエルのオスとメスの見分け方は、サイズのほかに色でも判断できます。
婚姻色は保護色とは反対で、天敵にも見つかりやすくなるため、オスのトノサマガエルが繁殖に命がけであることがわかります。
⑧トノサマガエルはアマガエルの数倍大きい
アマガエルのサイズが0.7~4.5センチに対し、トノサマガエル成体の大きさが2.0~9.5センチ。(幼体含む)
いざ画像で幼体アマガエルと成体トノサマガエルを見比べると、トノサマガエルのほうが圧倒的に大きいことがわかります。
そのため、カマキリや同じカエルであるヌマガエルはアマガエルのとっては天敵ですが、トノサマガエルにとってはエサと化します。
なおトノサマガエルの幼体はアマガエルの成体より小さいので、アマガエルの成体と飼育すると、仲良く過ごす光景が見られます。
ただし、トノサマガエルの成長速度は速く、2か月ぐらいでアマガエル成体を抜かします。
⑨アマガエルの鳴のうは1つ、トノサマガエルの鳴のうは2つ
オスのカエルは鳴き声を大きくするために、『鳴のう』と呼ばれる音を反響させる器官を備えています。
鳴のうの数はトノサマガエルとアマガエルで異なり、アマガエルは1つに対し、トノサマガエルは2つあります。
そして、なぜか体のサイズも小さく、鳴のうが1つしかないアマガエルのほうが鳴き声が大きいです。
アマガエルは小さな体なため、視覚でなく聴覚でメスに存在場所を気づかせる必要があるので、鳴のうが特に発達し、大きな音が出せるように進化したと言われているよ。
⑩トノサマガエルはメスも鳴く
カエルはオスだけが鳴くと言われていますが、トノサマガエルを含む一部のカエルはメスも鳴きます。
ただし、前述した『鳴のう』はメスには備わっていないので、大きな声で鳴くことはできません。
トノサマガエルのメスが鳴く理由は、『卵巣がないなど、繁殖機能がないことをオスに告知』と言われていますが、真相は定かでありません。
我が家のメストノサマガエルたちは、何かに反応しているかのように、合唱していたことがあったので、トノサマガエル同士の何かのサインを意味しているとも考えられます。
トノサマガエルとアマガエルの見分け方を表で解説
これまで説明してきたトノサマガエルとアマガエルの違いをもとに、見分け方を表にしてみました。
見分けるポイント | トノサマガエル | アマガエル |
---|---|---|
大きさ | 大きい(幼体でアマガエル成体より一回り小さい程度) | 小さい(幼体は1センチ未満) |
鳴のう(オスのみ) | 2つ | 1つ |
吸盤 | なし | あり |
後ろ足 | ヒレのようになっている | 前足と同じくヒレにはなっていない |
これだけ覚えておけば、トノサマガエルとアマガエルを見間違えることはありません。
とくに大きさはかなり差ができ、トノサマガエルは幼体でもアマガエル成体より一回り程度しか小さくなく、1~2か月でアマガエルを上回る体格になります。
トノサマガエルとアマガエルの違いまとめ
本記事ではトノサマガエルとアマガエルの生態・特徴における10の違いについてお伝えしました。
- アマガエルは全国に生息、トノサマガエルは西日本を中心に生息
- トノサマガエルは半水棲カエル、アマガエルは樹上性カエル
- トノサマガエル準絶滅危惧に指定
- アマガエルは吸盤があり壁も登れる
- トノサマガエルは後ろ足がヒレのようになっている
- アマガエルのほうが皮膚の色が大きく変わる
- トノサマガエルは性別で色が異なる
- トノサマガエルはアマガエルの数倍大きい
- アマガエルの鳴のうは1つ、トノサマガエルの鳴のうは2つ
- トノサマガエルはメスも鳴く
トノサマガエルとアマガエルは日本を代表する人気のカエルなので、違いについてはしっかり覚えておきましょう。
違いを理解しておくことで、飼育の応用度も高められます。
また生態が異なるトノサマガエルとアマガエルでは飼育方法も変わってきますので、これから両者を飼われる方は以下2つの記事を参考にしてください。
当サイトでは自身の失敗を含む飼育体験談を元に、これからカエルを飼育する方に役立つ情報を発信していきます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。